えるぼし認定って何? 経審の加点も受けられる? えるぼし認定のメリットと申請上の注意点

「えるぼし認定」をご存知でしょうか?えるぼし認定とは、女性の活躍推進の取り組みが優れている事業主に対する認定制度です。

えるぼし認定を受けるとさまざまなメリットがありますが、当然認定を受けるためにはいくつかの基準をクリアする必要があります。今回はえるぼし認定のメリットや申請における注意点について解説していきます。

目次

えるぼし認定とは

えるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良である等の一定の要件を満たした事業主を認定するものです。

えるぼし認定の段階は、それぞれの事業主の女性活躍に資する項目の実績に応じて3段階に分かれています。ざっくり言うと、基準を満たしている項目が多いほど星の数が多くなります。

また、更に上のグレードの認定としてプラチナえるぼし認定というものもあります。これはえるぼし認定を受けた事業主のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取組の実施状況が特に優良である事業主を認定するものです。

えるぼし認定のメリット

えるぼし認定を受けるとさまざまなメリットがあります。ここではえるぼし認定のメリットを紹介しますので、ぜひ申請をご検討ください。

人材の確保につながる

えるぼし認定を取得することで、えるぼし認定マークを商品、名刺、制服、自社のホームページやハローワークの求人票等に使用することができます。認定マークを表示することにより、女性活躍に力を入れている事業主であることを、一般の方々、顧客、学生を含む求人者等に幅広くPRすることが可能になります

ハローワーク求人票や求人情報画面にPRロゴマークとして表示する方法については、ハローワーク窓口にてお尋ねください。

経営事項審査における加点対象となる

令和5年1月1日以降、えるぼし認定は経営事項審査における加点対象となりました。最大5点が加点されます。

ただし、参考資料にありますとおり、くるみん認定やユースエールも取得している場合には、それぞれ加点されるわけではありませんのでその点ご注意ください。

国土交通省:「経営事項審査の主な改正事項(令和5年1月1日・一部令和4年8月15日改正)」

公共調達で有利になる場合がある

えるぼし認定を受けた事業主は、公共調達で加点評価を受けることができ、有利になる場合があります。

厚生労働省:「女性活躍法に基づくえるぼし認定プラチナえるぼし認定のご案内」P3

(※1)労働時間等の働き方に係る基準は満たすことが必要。
(※2)常時雇用する労働者の数が100人以下の事業主に限る(計画期間が満了していない行動計画を策定している場合のみ)。

具体的な内容は各調達の問い合わせ先にご確認ください。

日本政策金融公庫による融資制度

えるぼし認定を受けた事業主は、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を通常よりも低金利で利用することができます。

詳しくは、日本政策金融公庫のホームページをご参照ください。

参照:日本政策金融公庫ホームページ

えるぼし認定取得の流れ

えるぼし認定取得までにはいくつかの段階を踏むことが必要です。以下の手順で進めてください。

一般事業主行動計画の策定・公表・届出

女性活躍推進法に基づいて一般事業主行動計画を策定します。現在、常時雇用する労働者101人以上の事業主は、策定・届出が義務となっていますが、100人以下の事業主でももちろん策定・届出することはできます。作成方法の詳細についてはここでは触れませんが、よく似た書類として次世代育成支援対策推進法の一般事業主行動計画というものがありますので、そちらとお間違えの無いようにご注意ください。

各種モデル計画も参考にしてください。

参考:厚生労働省 女性の活躍推進企業データベース

計画の作成後は、計画の社内周知及び外部への公表を行います。こちらの公表は「女性の活躍推進企業データベース」はもちろん、自社のホームページ等でも行えます

その後、「一般事業主行動計画策定届」を各都道府県労働局の雇用環境均等室(部)に届出してください。届出は、郵送や電子申請でも受け付けています。郵送の際には、同じ届出書類をもう一部と必要金額の切手を貼った返信用封筒を同封することにより、労働局の受領印を押印した控えをもらうことも可能です。(事前に各労働局にご確認ください。)

女性活躍に関する情報公開

女性の活躍に関する状況について、「女性の活躍推進企業データベース」や自社のホームページ等に公表します。
常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は義務、100人以下の事業主は努力義務です。

常時雇用する労働者数が301人以上の事業主については、以下の①から「男女の賃金の差異」を含む2項目以上、②の区分から1項目以上を選択し、合計3項目以上を公表する必要があります。

常時雇用する労働者数が101人以上300人以下の事業主については、①と②の全項目から1項目以上選択して公表する必要があります。

常時雇用する労働者数が100人以下の事業主については、情報公表は努力義務とされています。
情報公表を行う際は、①と②の全項目から1項目以上選択して公表してください。

厚生労働省:「女性活躍法に基づくえるぼし認定プラチナえるぼし認定のご案内」P1

えるぼし認定申請

一般事業主行動計画の策定・公表・届出と女性活躍に関する情報公開が完了して、初めてえるぼし認定の申請が可能となります。

えるぼし認定を申請するには、「女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準」の「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの評価項目のうち最低1つをクリアする必要があります。そして大事なのは、基準をクリアしていない項目につき、事業主行動計画策定指針に定められた取組の中から当該項目に関連するものを実施し、その取組の実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続してその実績が改善していることです。クリアしていないすべての項目について、2年以上連続して実績が改善していないと、えるぼし認定申請はできません。

基準を満たさない項目

当該項目に関連する取組を実施し、その取組の実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表し、2年以上連続してその実績が改善していることが必要

女性の職業生活における活躍の状況に関する実績に係る基準について

5つの基準の各項目につき細かく見ていきます。

産業ごとの平均値についてはこちらを参照ください。

参照:「女性活躍法に基づく認定っ制度に係る規準における平均値 適用:令和5年7月1日~令和6年6月30日」

採用

男女別の採用における競争倍率(応募者数/採用者数)が同程度であること。(直近3事業年度の平均した「採用における女性の競争倍率×0.8」 が、直近3事業年度の平均した「採用における男性の競争倍率」よりも雇用管理区分ごにそれぞれ低いこと。)
又は
② 直近の事業年度において、次の(i)と(ii)の両方に該当すること。
(i) 正社員に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること。
(ii) 正社員の基幹的な雇用管理区分における女性労働者の割合が産業ごとの平均値(平均値が4割を超える場合は4割)以上であること

・事業年度内の新卒採用はもちろん、中途採用における応募者数、採用者数を総合計します。
・採用者数には内定者を含んでも構いません。

継続就業

(ⅰ) 直近の事業年度において、次の①と②のいずれかに該当すること。
①「女性労働者の平均継続勤務年数」÷「男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとにそれぞれ7割以上であること。
(※)期間の定めのない労働契約を締結している労働者に限る。
②「女性労働者の継続雇用割合」÷「男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとにそれぞれ8割以上であること。
(※)新規学卒採用者等として雇い入れた労働者であって、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に限る。
(ⅱ) (ⅰ)を算出することができない場合は、以下でも可。
直近の事業年度において、正社員の女性労働者の平均継続勤務年数が産業ごとの平均値以上であること。

男女全ての労働者につき、同一のルールにて勤続年数をカウントする必要があります。

例えば、年度の末日時点において、
・勤続年数を、小数点第2位で四捨五入し、小数点第1位まで個別に出す等が考えられます

労働時間等の働き方

雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働及び法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとに全て45時間未満であること。
・ 「各月の対象労働者の(法定時間外労働+法定休日労働)の総時間数の合計」÷「対象労働者数」 < 45 時間
これにより難い場合は、
・ [「各月の対象労働者の総労働時間数の合計」-「各月の法定労働時間の合計=(40×各月の日数÷7)×対象労働者数」] ÷「対象労働者数」< 45 時間

基準を満たしていない場合

「時間外労働及び休日労働の時間数が月45時間以上の月数」及び「1人当たりの時間外労働及び休日労働の1月当たりの時間数」両方の項目が、2年以上連続して改善している必要があります

管理職比率

次の(ⅰ)と(ⅱ)のいずれかに該当すること。
(ⅰ) 直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること。
(ⅱ) 「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した女性労働者の割合」÷「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した男性労働者の割合」が8割以上であること。

「管理職」とは、「課長級」と「課長級より上位の役職(役員を除く)」にある労働者の合計

「課長級」とは、以下のいずれかに該当する者
・事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、2係以上の組織からなり、若しくは、その構成員が10人以上(課長含む)の長
・同一事業所において、課長の他に、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「課長級」に相当する者
(ただし、一番下の職階ではないこと)

多様なキャリアコース

直近の3事業年度のうち、以下ア~エについて、
・常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は2項目以上(非正社員がいる場合は必ずアを含むこと)
・常時雇用する労働者数が300人以下の事業主は1項目以上の実績を有すること
ア  女性の非正社員から正社員への転換(派:雇入れ)
イ  女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換
ウ  過去に在籍した女性の正社員としての再雇用
エ  おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用

「非正社員」とは、正社員以外の者をいいます。

「正社員」とは社会通念に従い、比較の時点で当該事業主において「通常」と判断される労働者をいいます。具体的には、いわゆる正規型の労働者及び事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(無期雇用フルタイム労働者)をいうものです。
いわゆる正規型の労働者は、労働契約の期間の定めがないことを前提として、長期雇用を前提とした待遇を受ける賃金体系であるなど雇用形態、賃金体系などを総合的に勘案して判断することになります。
無期雇用フルタイム労働者は、その業務に従事する無期雇用労働者のうち、1週間の所定労働時間が最長の労働者をいいます。このため、いわゆる正規型の労働者の全部又は一部が、無期雇用フルタイム労働者にも該当する場合があります。

厚生労働省:「パートタイム有期雇用労働法ののあらまし」P2

えるぼし認定に関する実績の公表

えるぼし認定に関する実績の公表は、必ず「女性の活躍企業データベース」にて行う必要があります。一般事業主行動計画の公表や女性活躍に関する情報公開のように、自社のホームページ等で行うことはできません。


参考:厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」

また認定取得後も、毎年少なくとも1回実績や取り組み状況につき公表する必要があります。

その他

女性の活躍を推進するにあたっては、出産時等男性の協力が必要不可欠な場面もあります。過去に男性の育休に関する記事も書いていますので、こちらもご参照ください。

記事:男性社員に育児休業を取得してもらい、会社も従業員も補助金をもらいましょう! (富山県限定)

まとめ

女性の採用比率、継続雇用割合や管理職比率等を高める取組は、意欲・能力を存分に発揮できる環境を作り、生産性向上を図る意味において重要ですが、社員の定着や採用による人材の確保、経営審査や公共調達にも影響しますので、会社の事業戦略としてもとらえる必要があります。

事業の長期的な繁栄を念頭に、すべての人が自分らしく輝ける職場環境の整備について一度じっくりとお考え下さい。

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