新型コロナ陰性でも受給可能。「新型コロナウィルス感染症対応特例」の助成金とは
両立支援等助成金の育児休業等支援コースに「新型コロナウイルス感染症対応特例」というものがあることをご存知ですか?この助成金は新型コロナウイルス感染症への対応として、臨時休業等をした小学校等に通う子どもや新型コロナウィルスに感染したおそれのある子どもの世話を行う労働者に対し、賃金の満額を支払う休暇を取得させた事業主に対して一定額を助成するものです。
今回はここの「新型コロナウイルス感染症対応特例」について解説していきます。
これまでの流れ
令和4年度までは「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」や「両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症小学校休業等対応コース)」がありましたがそれらが終了し、新たに内容が若干変わって「新型コロナウイルス感染症対応特例」が令和5年4月1日から始まりました。
なお過去に、新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金または両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症小学校休業等対応コース)の支給を受けた事業主でも、本助成金の受給は可能です。
助成金の内容
支給対象者とその取り組み
新型コロナウイルス感染症への対応として、臨時休業等をした小学校等に通う子どもの世話を行う労働者に対し、有給(賃金全額支給)の休暇を取得させた事業主が対象となります。労働者が年次有給休暇を取得した場合は対象となりませんのでご注意ください。
また支給要件を満たした場合も、あくまで支給対象は事業主です。労働者ではありません。
特別有給休暇の賃金は全額を支給する必要があります。例えば8割を支給する場合は、助成金の支給対象となりません。
助成額
助成額は次の通りとなります。
同一の労働者については1回限りの申請となります。
対象労働者が学校休業等により何日休んだとしても受給金額は一律10万円です。
出典:厚生労働省両立支援等助成金 育児休業等支援コース「新型コロナウイルス感染症対応特例」のご案内
対象となる子ども
次のいずれかに該当する子どもが対象となります。
1.新型コロナウイルス感染症への対応として、ガイドライン等に基づき、臨時休業等をした小学校等に通う子ども
2. ⅰ)~ⅲ)のいずれかに該当し、小学校等を休むことが必要な子ども
ⅰ)新型コロナウイルスに感染した子ども
ⅱ)風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある子ども
ⅲ)医療的ケアが日常的に必要な子ども又は新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクの高い基礎疾患等を有する子ども
臨時休業等とは?
1.の「臨時休業等をした小学校等」の臨時休業等は、次の状態を指します。
・小学校等がガイドラインに基づき、臨時休業や当該施設又は事業の利用の停止を行うこと
・ 地方公共団体、施設の設置者又は事業者から当該施設又は事業の利用を控えるよう依頼すること
・特定の子どもについて、学校長が新型コロナウイルスに関連して出席しなくてもよいと認めること(学校以外の場合については、特定の子どもが新型コロナウイルス感染症にかかる予防接種を受けるため又は当該接種後の発熱等の症状のため欠席等している場合は、施設等の長の承認の有無にかかわらずこれに含まれるものであること。)
小学校等の範囲
ここでいう「小学校等」とは以下の施設又は事業をさします。
・小学校
・義務教育学校(前期課程に限る。)
・各種学校(幼稚園又は小学校の課程に類する課程を置くものに限る。)
・特別支援学校(全ての部)
・不登校の学齢児童の学習指導を主たる目的とする教育支援センター、不登校特例校、その他民間施設
・放課後児童健全育成事業(児童福祉法第6条の3第2項)
・放課後等デイサービスを行う事業(児童福祉法第6条の2の2第4項)
・幼稚園
・保育所
・認定こども園
・家庭的保育事業、小規模保育事業、居宅訪問型保育事業、事業所内保育事業(児童福祉法第6条の3第9項から第12項まで)
・認可外保育施設(児童福祉法 59 条の2第1項の規定による届出が行われた施設)
・へき地保育所(へき地保育事業の実施について(平成 26 年5月 29 日雇児発 0529 第 30 号))
・一時預かり事業(児童福祉法第6条の3第7項)
・病児保育事業(児童福祉法第6条の3第 13 項)
・延長保育事業(子ども・子育て支援法(平成 24 年法律第 65 号)第 59 条第2号)
・子育て援助活動支援事業(児童福祉法第6条の3第 14 項)
・子育て短期支援事業(児童福祉法第6条の3第3項)
・児童心理治療施設(通所の用に供する部分に限る。)(児童福祉法第 43 条の2)
・児童自立支援施設(通所の用に供する部分に限る。)(児童福祉法第 44 条)
・児童発達支援を行う事業(児童福祉法第6条の2の2第2項)
・医療型児童発達支援を行う事業(児童福祉法第6条の2の2第3項)
・短期入所を行う事業(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成 17年法律第 123 号)第5条第8項)
・日中一時支援事業(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第 77 条第3項)
・地域活動支援センター(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第 77条第1項第9号)
ただし、障害のある子どもについては、以下に掲げる施設も含まれます。
・中学校、義務教育学校(後期課程に限る。)
・高等学校
・中等教育学校
・高等専門学校(第1学年から第3学年まで)
・専修学校(高等課程に限る。)
・各種学校(中学校又は高等学校の課程に類する課程を置くものに限る。)
・不登校の学齢生徒の学習指導を主たる目的とする教育支援センター、不登校特例校、その他民間施設
子どもが新型コロナウイルス感染症に感染しておらず、学校等も休業していないが、親(労働者)が新型コロナウイルス感染症に感染したために、仕事を休まざるを得なくなった場合は本助成金の対象とはなりません。
本助成金は学校休業等に伴い、子どもの世話をするために、仕事を休まざるを得なくなった労働者が休んだ場合に支給するものです。
インフルエンザウイルスが原因で、学級閉鎖が行われた場合は、支給対象となりません。
あくまで新型コロナウイルスが原因となることを要件としています。
夏休みや土日祝等、学校等の休日に特別休暇を取得した場合は、
小学校等の臨時休業の場合 → 対象となりません
新型コロナウイルスに感染したおそれのある子ども等の世話のための休暇の場合 → 対象となります
例えば子どもに発熱等の風邪症状があったため、医療機関を受診した結果、新型コロナウイルスについて陰性と判定された場合にも、本助成金の対象となります。
「発熱等の風邪症状のある子ども」が医療機関を受診した結果、陰性と判定されたのであれば、結果の判明日までに取得した休暇については、「新型コロナウイルス感染症の病原体に感染したおそれがある子ども」の世話をするための休暇として、本助成金の対象として扱われます。
対象となる保護者
子どもの親はもちろんですが、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護する者のほか、子どもの世話を一時的に補助する親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいいます)も対象者に含まれます。
両親など複数の保護者が同時に休む場合でも、保護者として子どもの世話をする必要がある場合には、子どもの人数にかかわらず対象となります。また、複数の保護者が同一企業に勤めている場合でも、それぞれの対象者について申請が可能です。
支給要件
以下の要件があります。
制度等の事前準備
まず事業主において、次のどちらも実施されていることが必要です。
① 対象となる子どもの世話を行う必要がある労働者が、特別有給休暇(賃金が全額支払われるもの)を年間7日以上取得できる制度の規定化
② 小学校等が臨時休業等した場合でも勤務できる両立支援の仕組みとして、次のいずれかの社内周知
・テレワーク勤務
・短時間勤務制度
・フレックスタイムの制度
・始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤の制度)
・小学校等の休業期間に限定した短時間勤務・時差出勤の制度
・夜勤回数の制限
・労働者の子ども向けの保育施設の設置・運営
・ベビーシッター費用補助制度 等
両立支援制度について、既に本助成金の要件に該当する制度がある場合は、既存の制度にて支給申請することが可能です。
周知については
・イントラネットや社内掲示板による掲示
・電子メールを利用して労働者に制度の内容を送信
・制度の内容を記載した書面を労働者へ交付
・事業所の見やすい場所に制度の内容を掲示
等、全ての労働者がその内容を知ることができるような方法により行うことが必要です。
労働者による制度の活用
事業主が整備した特別有給休暇制度を、労働者が活用した実績も必要です。
労働者一人につき、定めた特別有給休暇を1日以上取得したこと
半日単位や時間単位で特別有給休暇を与えた場合は、取得時間を合計して当該労働者の1日の平均所定労働
時間以上となることが必要です。
対象労働者は有給休暇取得時または支給申請日において雇用保険の被保険者であることも要件になっています。
対象となる休暇期間
令和5年4月1日から令和6年3月 31 日における休暇が対象となります。令和5年3月 31 日以前の休暇については、本助成金の対象とはなりません。
年次有給休暇や欠勤を、事後に特別有給休暇に振り替えた場合にも、本助成金の対象となり得ます。但し、年次有給休暇を事後的に特別有給休暇に振り替える場合には、労働者本人に説明し、同意を得ることが必要です。
手続きについて
申請書類
支給申請書と併せ、添付書類として下記書類が必要となります。
・有給休暇の制度について規定していることが確認できる労働協約若しくは就業規則又は関連する内規等
・小学校等が臨時休業等した場合でも勤務できる両立支援の仕組みが社内周知されていることが確認できる書類
・対象労働者が有給休暇を取得したことが確認できる書類(出勤簿等)
・対象労働者が取得した有給休暇について、年次有給休暇取得の場合と同等の賃金が支払われたことが確認できる書類及び年次有給休暇取得の場合の賃金算定方法が分かる書類(賃金台帳等)
・対象労働者の通常の賃金が確認できる書類(労働条件通知書等)
・対象労働者の所定労働日や所定労働時間が確認できる書類
・小学校等が臨時休業等をしたことについて確認できる書類
・新型コロナウイルス感染症の病原体に感染したおそれがある子ども等の世話を行うための有給休暇を取得した場合、新型コロナウイルス感染症の病原体に感染したおそれがある事由等が確認できる書類
・対象労働者について、対象事業主に雇用されており、申請日時点において、1日以上勤務している労働者であることが確認できる書類(タイムカード等)
・年次有給休暇、欠勤や勤務時間短縮などを事後的にこの有給休暇に振り替えた場合は、事後的にこの有給休暇に振り替えることについて労働者本人に同意を得たことが分かる書類
その他、別途書類が必要となるケースもありますので、詳細は「両立支援等助成金 育児休業等支援コース 支給要領」及び各事業主の本社を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にて、必ずご確認ください。
支給申請期間
特別有給休暇を取得した日 | 申請期間 |
令和5年4月1日~令和5年6月30日 | 令和5年4月1日~令和5年8月31日 |
令和5年7月1日~令和5年9月30日 | 令和5年7月1日~令和5年11月30日 |
令和5年10月1日~令和5年12月31日 | 令和5年10月1日~令和6年2月29日 |
令和6年1月1日~令和6年3月31日 | 令和6年1月1日~令和6年5月31日 |
有給休暇を分割で取得し、複数期間にまたがる場合は、支給要件を満たした(取得した休暇が1日以上になった)日が属する期間により申請期間を判断します。
その他の助成金情報
過去に他の助成金の記事も書いていますので、こちらもご覧ください。
記事:建設業事業主必見! 働き方改革推進支援助成金を活用して時間外労働の上限規制に対応しましょう
まとめ
助成金は支給要件に合致し、申請期限内に必要書類をもれなくそろえて申請すれば必ず受給できます。事業主さんはお子さんのいる労働者が仕事と家庭の両立を図りやすくなるように、そして労働者の方の満足度が向上し、今後長く働いてくれるようにするためにも、ぜひ制度の整備をご検討ください。
さらに働きやすい会社になるいいきっかけになるのではないかと思います。