建設業事業主必見! 働き方改革推進支援助成金を活用して時間外労働の上限規制に対応しましょう

以前のブログでお伝えしましたとおり、令和6年4月1日から建設業においても時間外労働の上限規制が適用されます。

ブログ:「建設業事業主の皆さんご注意ください!建設業でも時間外労働に上限が設定されます 。」

知ってはいるけど、コスト面の問題もありなかなか対応が難しい、という事業主さんも多いのではないでしょうか。そんな方には助成金をもらいながら取り組む方法をおすすめします。

ということで今回は「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース」について説明したいと思います。

目次

「働き方改革推進支援助成金」とは

「働き方改革推進支援助成金」は、労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備等に取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成するものです。

生産性を高めながら労働時間の縮減等に取り組む中小企業事業者に対して助成を行い、中小企業事業主における労働時間の設定の改善の促進を目的としています。

コースはいくつかありますが、今回は「適用猶予業種等対応コース」に絞ってご紹介していきます。

「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース」って?

「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース」は令和5年度に新設された助成金です。

令和6年4月1日から、建設業、運送業、病院等、砂糖製造業といった、適用猶予業種等へ時間外労働の上限規制が適用されます。

このコースは、生産性を向上させ、時間外労働の削減、週休2日制の推進、勤務間インターバル制度の導入等に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主の皆さまを支援するものです。

今回はこの中から更に、「建設業」での適用猶予業種等対応コース申請の場合に絞ってご説明します。

「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース(建設業)」の趣旨

このコースは、生産性を向上させ、労働時間の削減や週休2日制の推進に向けた環境整備に取り組む中小建設業事業主の皆さまを支援するものです。

参考:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金リーフレット(適用猶予業種等対応コース・建設業)」

「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース(建設業)」の対象事業主

以下のいずれにも該当する事業主が対象となります。

  • 建設業の事業主であること
  • 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること
  • 交付申請時点で、36協定を締結していること
  • 「成果目標②」を選択する場合、交付申請時点の所定休日が4週当たり4日から7日であること

年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していることとは?

「年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること」という項目を満たす必要がありますが、これは事業所の規模により、下記の通り求められる内容が若干異なります。

10人以上の従業員を使用する事業場であれば、年次有給休暇の時季指定の対象となる従業員の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載してあること

10 人未満の従業員を使用する事業場にであれば、「年次有給休暇管理簿」が作成されていること

36協定における注意点とは?

「交付申請時点で36協定を締結していること」という項目がありますが、次の点にご注意いただく必要があります。

交付申請時点で36協定を締結していることはもちろんですが、前年度(令和4年度)中から36協定届を締結・届出していることが必要です。つまり、交付申請時点で36協定を締結していても、令和5年度になって初めて36協定を締結・届出した事業主は助成金の対象とはなりません

令和4年度から、36 協定を締結・届出している場合であっても、最新の36協定の届出日が令和5年度(令和5年4月1日以後)である場合は、令和4年度の 36 協定についても、36 協定の1箇月の延長することができる時間数が月 60 時間を超える時間数を締結・届出していることが必要です。

「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース(建設業)」で達成を目指す取り組み

次の成果目標から1つ以上を選択し、会社として達成を目指して取り組みます。そもそも助成金をもらうことが目的ではなく、この部分が会社にとって大きな目的です

成果目標の内容

成果目標①
60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数を縮減させること

✓時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間以下に設定
✓時間外労働と休日労働の合計時間数を月60時間を超え月80時間以下に設定

成果目標②
全ての対象事業場において、週休2日制の推進に向けて、1.から4.のいずれかの範囲内で休日を増加させること。

1. 4週当たり8日以上に設定
2. 4週当たり7日に設定
3. 4週当たり6日に設定
4. 4週当たり5日に設定

「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース(建設業)」で支給対象となる取組み

次の支給対象となる取組のうち、いずれか1つ以上実施します。この取り組みにかかった経費の一部が助成金として支給されます。

  • 労務管理担当者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの及び業務研修を含む)
  • 労働者に対する研修(勤務間インターバル制度に関するもの及び業務研修を含む)、周知・啓発
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更
  • 人材確保に向けた取組
  • 労務管理用ソフトウェア
  • 労務管理用機器
  • デジタル式運行記録計
  • 労働能率の増進に資する設備・機器

働き方改革推進支援助成金支給要領に次のような記載がありますのでご注意ください。

第2 助成金の支給等

(中略)

2 不支給等要件

(中略)

⑦ 交付要綱第3条第1項の改善事業の受託者が、申請事業主、申請代理人、提出代行者または事務代理者(これらの者の関連企業(一方が他方の経営を実質的に支配していると認められる場合に限る。)を含む。)である場合。

引用元:厚生労働省:「働き方改革推進支援助成金支給要領(適用猶予業種等対応コース)」

 例えば我々社会保険労務士が、あなたの会社の助成金を事務代理として申請するとします。その場合に同じ社会保険労務士が、就業規則の作成や労働時間短縮に向けたコンサルティングをやったとしても、助成金は支給されませんよと言う意味です。先ほどの「助成金支給対象となる取組み」に当てはまるものであっても、助成金自体の代理人と改善に向けた取り組みの実施者が同じであると支給されませんので、事前によくご確認ください。

「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース(建設業)」の助成率・助成額

助成率は原則、かかった経費の3/4です。

しかし、常時使用する従業員の数が30 人以下で、かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費(「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース(建設業)」で支給対象となる取組」からの経費)の合計が 30 万円を超える場合は、当該経費の助成率は4/5となります。

また、助成額の上限もありますのでご注意ください。

最終的な助成上限額は、(1)「成果目標①の上限額」、(2)「成果目標②の上限額」及び(3)「助成上限額の加算」の合計額となります。

(1)成果目標①の上限額

出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)申請マニュアル(2023年度)」

(2)成果目標②の上限額

増加させた休日の日数に応じて、上限額は次の表のとおりとなります。

従業員によって休日日数が異なる場合は、その事業場において申請時点で付与される所定休日が最も少ない従業員で判断します。
1年間における所定休日数を定めている場合は、以下の計算式により、4週間当たりの所定休日を算出します。
(年間所定休日数)÷(365日÷7)×4

出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)申請マニュアル(2023年度)」

(3)助成上限額の加算

成果目標に加えて、その事業場で指定する従業員(雇い入れ後3月を経過していない従業員を除きます)の時間当たりの賃金額の引上げを3%以上又は5%以上行うことを成果目標にすることができます。その場合に、助成上限額の加算がされます。

賃金引上げする場合は、3%以上又は5%以上のいずれかを選択するものとなります。

加算額は、指定した従業員の賃金の引上げ数の合計に応じて、次のとおりとなります。

出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)申請マニュアル(2023年度)」

助成額の計算例

■申請事業所の状況(例):
・従業員数7人の事業所
・現在の36協定における時間外労働+休日労働の合計時間数は70時間
・事業実施後に設定する時間外労働+休日労働の合計時間数は50時間
・労働能率の増進に資する設備・機器の購入費用400万円
・従業員7人全員の賃金を3%引き上げ

■助成額の計算(例):
☆対象経費×助成率
 対象経費 400万円 × 4/5 = 320万円

☆助成額上限
 (成果目標①)200万円 +(賃上げによる上限額の加算)100万円 =300万円

  320万円 > 300万円

★助成額
 300万円 となります。

※例として簡単に説明しています。実際にはその他の要件や事業主によっての消費税の取扱いの違い等ありますので、都度ご確認ください。

「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース(建設業)」の申請期限

令和5年11月30日が締め切りとなっています。この日までに事業所の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境均等室または雇用環境均等部に提出してください。

但し、この助成金はこれまでも、期限を待たずに申請多数のためにて受付終了となったケースがありますので、十分に注意してください。

申請が終了していないかについては、最寄りの労働局雇用環境均等室(部)にご確認ください。

参考:都道府県労働局一覧

その他の要件等詳細については、厚生労働省のホームページ及び各種資料を十分にご確認の上、不明点については随時管轄の都道府県労働局雇用環境均等室(部)にご相談ください。

参考:厚生労働省ホームページ「働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)」

まとめ

建設業における時間外労働の上限規制は、どの会社どの個人事業主であっても、令和6年4月1日から必ず対応しないといけない内容です。違反した場合には罰則の適用もあります。

そして対応には経費が掛かることも少なくはありません。

この「働き方改革推進支援助成金 適用猶予業種等対応コース」をうまく活用することで、法改正に対応することはもちろん、従業員が働きやすい会社=長く繫栄する会社 を作るきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

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