高年齢者・障害者雇用状況報告の提出期限と記入時のポイント

毎年6月1日現在の高年齢者および障害者の雇用状況について、対象となる事業主はハローワーク等を通じて厚生労働大臣へ報告しなければなりません。令和8年(2026年)の提出期限は、7月15日(水)です。
報告内容は、国が今後の高年齢者雇用・障害者雇用に関する施策を検討する際の基礎資料として使用されます。また、必要に応じて、ハローワークや労働局が事業主に対して助言、指導等を行う際の情報としても活用されます。報告後は、厚生労働省が全国の企業から提出された内容を集計し、雇用状況の結果を公表します。
令和8年は、高年齢者雇用状況等報告書の様式が変更されています。また、障害者の法定雇用率についても、令和8年7月1日に引上げが予定されています。本記事では、それぞれの報告書の対象範囲、主な記載事項、令和8年報告における注意点を整理します。
1.高年齢者雇用状況等報告とは
高年齢者雇用状況等報告は、企業における定年制度、継続雇用制度、70歳までの就業機会確保措置などの実施状況を、毎年報告するものです。
高年齢者を雇用していない場合であっても、対象となる事業主は報告を行う必要があります。支社、支店、営業所、工場など複数の事業所がある企業については、それぞれの事業所から個別に提出するのではなく、原則として本社が各事業所の内容を取りまとめて提出します。
高年齢者雇用状況等報告書の主な報告事項
報告書には、主に次の事項を記載します。
・定年制の有無および定年年齢
・継続雇用制度の導入状況
・継続雇用制度の対象年齢
・70歳までの就業機会確保措置の実施状況
・創業支援等措置の実施状況
・創業支援等措置の導入・改定予定
・65歳を超えて働くことができる制度の状況
・常用労働者数
・過去1年間の離職者の状況
・過去1年間に定年年齢へ到達した者の状況
・定年到達者に対する継続雇用制度等の適用状況
・高年齢者雇用等推進者の氏名等
創業支援等措置とは
高年齢者雇用安定法では、事業主に対し、70歳までの就業機会を確保するための措置を講ずることを努力義務としています。就業機会確保措置には、定年年齢の引上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止といった「雇用による措置」だけでなく、雇用契約によらない「創業支援等措置」も含まれます。
- ・高年齢者と業務委託契約を締結し、継続的に仕事を依頼する制度
- ・事業主が実施する社会貢献事業に、高年齢者が継続的に従事できる制度
- ・事業主が委託、出資その他の援助を行う団体の社会貢献事業に、高年齢者が従事できる制度
創業支援等措置は労働者として雇用する制度ではないため、導入する場合には、過半数労働組合または過半数代表者の同意を得たうえで、必要な計画を作成する必要があります。
高年齢者雇用状況等報告における「常用労働者」
高年齢者雇用状況等報告における常用労働者は、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなどの名称だけで判断するものではありません。
- ・1年以上継続して雇用されている者、または1年以上継続して雇用されることが見込まれる者
- ・1週間の所定労働時間が20時間以上の者
ただし、昼間学生など、雇用保険の被保険者とならない者については除外されます。一方、過去1年間の離職者数や定年到達者数など、一部の欄については、常用労働者に限定せず、週所定労働時間20時間未満の者を含めて集計する場合があります。
報告書の欄ごとに対象者の範囲が異なるため、単純に雇用保険の被保険者名簿だけを基に集計しないよう注意が必要です。
令和8年から高年齢者雇用状況等報告書の様式が変更
令和8年の報告では、高年齢者雇用状況等報告書の様式が改正されています。
これは、継続雇用制度の対象者を労使協定で限定することができた経過措置が、令和7年3月31日をもって終了したことに伴うものです。令和7年4月1日以降は、希望する者全員について、65歳までの雇用を確保することが必要となっています。
- ・65歳までの定年年齢の引上げ
- ・希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度の導入
- ・定年制の廃止
経過措置の終了に伴い、令和8年版の報告書からは、継続雇用制度の対象者を限定する基準に関係する項目や選択肢が削除されています。
前年の様式を保存している企業も、令和8年報告では必ず最新の様式を使用してください。

出典:厚生労働省『高年齢者雇用状況等報告書』(加工して作成)
厚生労働省は、高年齢者雇用状況等報告書の作成に利用できるExcel形式のエラーチェックツールを公開しています。
エラーチェックツールを利用する場合の注意
入力内容の不整合や記入漏れを確認できるため、報告書作成時に活用すると便利です。ただし、令和8年は報告書の様式が変更されています。過去にダウンロードしたファイルをそのまま使用せず、令和8年6月1日以降に公開された最新のエラーチェックツールを使用する必要があります。
なお、エラーチェックツールで作成したExcelファイルを、そのまま電子申請に添付して提出できるとは限りません。電子申請を利用する場合は、電子申請用の入力方法や案内を別途確認してください。
参考:厚生労働省『高年齢者雇用状況等報告の記入に係るエラーチェックツールのご案内』
職種や雇用形態によって定年制度が異なる場合
正社員、専門職、現業職、パートタイマーなど、職種や雇用区分によって定年年齢や継続雇用制度が異なる企業もあります。この場合、報告書のすべての欄を、特定の一つの職種だけを基準に記入するわけではありません。
・⑧欄から⑬欄
定年年齢が最も低い職種・雇用区分の制度内容を記入する
・⑰欄から⑲欄
すべての職種・雇用区分の対象者を集計して記入する
複数の制度が併存している企業については、厚生労働省の記入要領に掲載されている集計補助欄を使用すると整理しやすくなります。
参考:厚生労働省『高年齢者雇用状況等報告書及び障害者雇用状況報告書 記入要領』P34
氏名欄には旧姓も記載可能
- 法人代表者
- 個人事業主
- 高年齢者雇用等推進者
- 報告書の記入担当者
社内で旧姓を使用している場合は、必ずしも戸籍上の姓に統一する必要はありません。
2.障害者雇用状況報告とは
障害者雇用状況報告は、毎年6月1日現在における障害者の雇用人数、実雇用率、常用雇用労働者数などを報告する制度です。令和8年6月1日現在では、常用雇用労働者が40.0人以上の民間企業が報告義務の対象となります。
障害者を実際に雇用しているかどうかにかかわらず、企業規模が報告基準に該当する場合は提出が必要です。したがって、雇用している障害者が0人の場合も報告しなければなりません。複数の支社、支店、営業所、工場などがある場合は、事業所ごとの状況を報告書に記載したうえで、本社が取りまとめて提出します。
令和8年の障害者雇用状況報告書については、報告内容および様式に大きな変更はありません。
障害者雇用状況報告の主な記載事項
主な報告事項は、次のとおりです。
・週所定労働時間30時間以上の常用雇用労働者数
・週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者数
・身体障害者、知的障害者および精神障害者の人数
・特定短時間労働者に該当する障害者の人数
・重度障害者の人数
・障害者の実雇用率
・障害者雇用推進者
・報告書の記入担当者
障害者雇用状況報告における常用雇用労働者
障害者雇用状況報告における常用雇用労働者について説明します。
- ・雇用期間の定めがない者、または1年以上継続して雇用されている者もしくは1年以上雇用されることが見込まれる者
- ・1週間の所定労働時間が20時間以上の者
正社員だけでなく、要件を満たす契約社員、パートタイマー、アルバイトなども対象です。
- ・育児休業、介護休業、傷病休職などにより休業・休職している者
- ・外国人労働者
- ・65歳以上の労働者
- ・日本国内の事業所から海外へ派遣している労働者
- ・一定の要件を満たす出向労働者
- ・雇用保険に加入している生命保険会社の外務員
- ・一定の要件を満たす登録型派遣労働者
出向者については、原則として主たる賃金を支払っている企業側で人数に含めます。判断が難しい場合、自社の雇用保険に加入しているかどうかも一つの確認材料となります。
海外勤務者については、日本国内の事業所に採用され、海外へ派遣されている者が対象となり、現地法人が現地で採用した者は通常含まれません。
参考:厚生労働省『障害者雇用状況報告書の提出義務と提出方法等について』P46
除外率制度について
障害者雇用率の算定では、障害者が就業することが困難と認められる一定の業種について、常用雇用労働者数から一定割合を控除できる「除外率制度」が設けられています。除外率制度そのものは平成16年に廃止されましたが、経過措置として、一部の業種では現在も除外率が設定されています。該当する企業は、除外率を適用した後の人数を基礎として、法定雇用障害者数や実雇用率を計算します。
除外率は段階的に縮小されています。過去の割合をそのまま使用せず、令和8年6月1日現在の業種別除外率を確認する必要があります。
参考:厚生労働省『障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について』
短時間労働者の数え方
障害者雇用状況報告書では、同じ短時間労働者であっても、記入する欄によって数え方が異なります。
短時間労働者の数え方
・⑩(ロ)欄
週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者1人を「1人」として記入
・⑩(ハ)欄
短時間労働者1人を「0.5人」として換算

障害者雇用状況報告書の⑩(ハ)欄に記載する常用雇用労働者数と、高年齢者雇用状況等報告書の常用労働者数が一致しないことがあります。
両方の報告書を作成する場合は、それぞれの定義と換算方法を区別して集計することが重要です。
障害者の人数は一律に「1人」とは限らない
雇用している障害者については、単純な在籍人数ではなく、障害の種類、障害の程度、週所定労働時間に応じた換算を行います。
- ・身体障害者
- ・知的障害者
- ・精神障害者
さらに、重度身体障害者・重度知的障害者に該当するかどうか、週所定労働時間が30時間以上か、20時間以上30時間未満か、10時間以上20時間未満かによって、算定上の人数が異なります。週所定労働時間が10時間以上20時間未満の労働者は「特定短時間労働者」とされます。
対象者の確認に当たっては、障害者手帳の種類、等級、有効期限、週所定労働時間などを確認したうえで、記入要領に従って換算する必要があります。

障害者の実雇用率の計算方法
企業が実際に雇用している障害者の割合を「実雇用率」といいます。具体的には、「障害者数」を「常用雇用労働者の数(除外率に相当する人数を控除した後の数)」で割って算出します。
基本的な計算方法は、次のとおりです。

単純な在籍人数を従業員数で割る計算ではないため注意が必要です。
障害者雇用推進者の選任
障害者を雇用する義務がある企業は、障害者雇用推進者を選任するよう努めなければなりません。
- ・障害者の採用計画
- ・募集および採用
- ・配置や職務内容の検討
- ・職場環境の整備
- ・障害者の雇用管理
- ・職場定着に向けた支援
- ・ハローワーク等との連絡調整
企業内で障害者雇用に関する実務を統括できる立場であることが望ましいため、人事・労務部門の部長など、一定の権限を有する管理監督者を選任することが推奨されています。
報告書には、障害者雇用推進者と記入担当者の氏名を記載します。これらの氏名は旧姓での記載も可能です。
令和8年6月1日現在の法定雇用率は2.5%
民間企業の障害者法定雇用率は、令和8年6月1日現在では2.5%です。
- ・法定雇用率:2.5%
- ・報告義務の対象:常用雇用労働者40.0人以上の企業
その後、令和8年7月1日から、民間企業の法定雇用率は2.7%へ引き上げられます。これに伴い、障害者を雇用する義務が生じる企業の範囲も、常用雇用労働者40.0人以上から37.5人以上へ拡大されます。
令和8年の雇用状況報告は、あくまで令和8年6月1日現在の状況を報告するものです。そのため、今回の報告書に2.7%や37.5人以上という7月以降の基準を使用しないよう注意してください。
なお、令和8年7月以降に障害者の雇用義務の対象となる企業は、今回の報告対象外であったとしても、今後の採用計画や雇用状況を確認しておく必要があります。
報告書の提出方法
報告書は、原則として企業の主たる事業所を管轄するハローワークへ提出します。一部の地域では、労働局が提出先となる場合があります。
- ・e-Govによる電子申請
- ・郵送
- ・ハローワーク等の窓口への持参
電子申請を利用する場合は、GビズIDまたは電子署名に対応したe-Govアカウント等が必要となる場合があります。GビズIDの取得には一定の日数を要することがあるため、初めて電子申請を利用する企業は早めに準備しておくことが必要です。
提出を怠った場合
高年齢者雇用状況等報告については、報告を怠ったことに対する直接の罰則は定められていません。ただし、高年齢者雇用安定法に基づく報告義務であるため、対象となる事業主は期限までに提出する必要があります。
一方、障害者雇用状況報告について、報告を行わなかった場合や虚偽の報告を行った場合には、障害者雇用促進法により30万円以下の罰金が科される可能性があります。
障害者を雇用していないことを理由として、報告を省略することはできません。
過去の記事
このほかにも、労働者に関するさまざまな記事を掲載していますので、あわせてご参照ください。
まとめ
令和8年の高年齢者雇用状況等報告書および障害者雇用状況報告書の提出期限は、いずれも令和8年7月15日(水)です。特に令和8年の報告では、次の点を確認しておきましょう。
- 高年齢者雇用状況等報告書は令和8年版の新様式を使用する
- 継続雇用制度の対象者を限定する経過措置に関する項目は削除されている
- 高年齢者報告と障害者報告では、労働者数の定義や数え方が異なる
- 障害者報告は、令和8年6月1日現在の法定雇用率2.5%を基準とする
- 令和8年7月1日以降の2.7%を今回の報告に使用しない
- 複数の事業所がある場合は、本社で情報を取りまとめる
- 前年のデータを流用するだけでなく、定年制度、継続雇用制度、週所定労働時間、障害者手帳の状況などを改めて確認する
各事業所からの情報収集や、対象労働者の集計には想定以上に時間がかかることがあります。前年の報告書、就業規則、雇用契約書、労働者名簿、雇用保険の加入状況、障害者手帳の確認資料などを準備し、余裕をもって作成を進めることをおすすめします。
