令和7年度 集計で読み解く!――北陸3県と全国の住宅着工動向【完全版】

令和7年度の国土交通省「建築着工統計調査報告」の着工件数の数字がまとまりましたので、例年どおり、北陸三県及び全国の住宅着工件数を取りまとめました。
今回の数字を見るうえでは、前年度からの増減だけでなく、その背景にある制度改正や大型物件の有無にも注意が必要です。特に、令和7年度は、令和6年度に見られた「建築基準法・建築物省エネ法改正前の駆け込み需要」の反動が表れやすい年度です。こうした点を踏まえ、この記事では、富山県を中心に、石川県・福井県・全国の住宅着工件数を、全体、注文住宅、賃貸住宅、分譲マンションの各項目ごとに確認していきます。
なお、国土交通省も、令和7年度の新設住宅着工戸数について、持家・貸家・分譲住宅が減少したため、昨年度の増加から再び減少となったと公表しています。
国土交通省 建築着工統計調査報告 時系列一覧
(【住宅】 都道府県別着工戸数 がわかりやすいです。)
用語解説
「建築主が自分で居住する目的で建築するもの」と定義されています。 いわゆる注文住宅のことです。
「建築主が賃貸する目的で建築するもの」と定義されています。 つまりアパート等を含めた賃貸住宅のことです。
企業が建てる社宅や、官公庁が建てる官舎などのことです。
「建て売り又は分譲の目的で建築するもの」と定義されています。いわゆる建売住宅や分譲マンションのことです。
表の見方
- 「戸数」は各項目の着工件数です。
- 「対前年同月比」は各項目の前年比です(例えば〇%増又は〇%減)。
但し、「合計」欄は前年度同月までの累計と比較した、増減戸数で表記しています。
国土交通省が一旦統計結果を発表後に、当該統計数値を修正することがあるようです。そのため期間経過後、数値に若干の誤差が生じる場合がございますのでご了承ください。
前年の住宅着工件数の実績及び分析
令和6年度の分析については過去の記事をご参照ください。
参考記事:「令和6年度 集計で読み解く!――北陸3県と全国の住宅着工動向」
富山県の住宅着工件数

令和7年度の富山県の住宅着工件数は、今回の記事の中でも特に大きなポイントです。
富山県の令和7年度の住宅着工総数は、3,783戸でした。
令和6年度の5,927戸から、2,144戸減少し、前年比では約36.2%減となっています。
令和元年度以降で見ても、令和7年度の3,783戸は最も少ない水準です。
富山県では、令和6年度に分譲マンションの着工が580戸と突出して多く、住宅着工総数を大きく押し上げていました。これに対し、令和7年度の分譲マンションは42戸にとどまり、前年度から538戸減少しています。
したがって、富山県の大幅減少は、まず令和6年度の大型分譲マンション着工の反動が大きな要因です。
ただし、落ち込みは分譲マンションだけではありません。
持家は2,039戸で前年比約24.6%減、貸家は1,305戸で前年比約39.2%減、分譲一戸建も369戸で前年比約18.5%減となっており、住宅着工全体が弱い動きとなりました。
令和6年度末の制度改正前の駆け込み需要の反動に加え、建築費の高止まり、住宅ローン金利上昇への警戒感、確認申請・省エネ基準対応などの実務負担が重なった年度といえます。
注文住宅にあたる持家は、2,039戸でした。
令和6年度の2,703戸から664戸減少し、前年比では約24.6%減となっています。
富山県の持家は、令和元年度には3,265戸、令和2年度は3,031戸、令和3年度は3,090戸ありましたが、その後は減少傾向にあります。令和7年度の2,039戸は、令和元年度以降で最も少ない数字です。
月別に見ると、4月は前年同月比約48%減、5月は約59%減、6月は約36%減と、年度当初から大きく落ち込みました。
令和6年度の3月に398戸の持家着工があり、制度改正前の前倒し着工が発生していたことを考えると、その反動が令和7年度当初に強く表れたと考えられます。
一方で、8月、9月、2月は前年同月比でプラスとなっています。特に9月は240戸で、令和7年度の持家では最も多い月でした。
そのため、年度を通じて一方的に悪化し続けたというより、前年度の反動が大きく出た後、一部の月では下げ止まりの動きも見られます。
もっとも、年間合計では大きく減少しており、注文住宅市場は依然として慎重な動きです。住宅価格の上昇に加え、住宅ローン金利の上昇が消費者心理に与える影響も無視できません。住宅金融支援機構も、マイナス金利政策の解除後、政策金利や長期金利の上昇が住宅ローン金利に影響を与えていると説明しています。
賃貸住宅にあたる貸家は、1,305戸でした。
令和6年度の2,147戸から842戸減少し、前年比では約39.2%減となっています。
富山県の貸家は、令和5年度が1,861戸、令和6年度が2,147戸と、比較的高い水準で推移していました。令和6年度は令和以降で最も多い水準でしたが、令和7年度はそこから大きく反落しました。
月別では、4月が前年同月比約62%減、9月が約47%減、12月が約49%減、3月が約70%減と、年間を通じて大きなマイナスの月が目立ちます。
一方で、5月と1月は前年同月比プラスとなっています。特に1月は125戸で前年同月比約51%増となっており、月によっては一定の着工も見られます。
ただし、年間合計で見ると、令和7年度の1,305戸は令和元年度以降で最も少ない水準です。
賃貸住宅についても、建築費の高止まりや投資採算の見通しの厳しさから、新規着工に慎重な姿勢が強まっている可能性があります。
分譲マンションは、42戸でした。
令和6年度の580戸から538戸減少し、前年比では約92.8%減となっています。
令和7年度の富山県の住宅着工を語るうえで、最も大きな変化はこの分譲マンションです。
令和6年度は、5月122戸、10月220戸、2月172戸など、まとまった規模の分譲マンション着工が複数ありました。年間合計では580戸となり、令和以降で突出して多い数字でした。
これに対し、令和7年度に分譲マンションの着工が確認できるのは10月の42戸のみです。
そのため、令和7年度の大幅減は、富山県の住宅市場全体が一気に縮小したというより、令和6年度に大型マンション案件が集中していた反動と見るべきです。
ただし、分譲住宅全体を見ると、マンションだけでなく分譲一戸建も369戸で、前年比約18.5%減となっています。
したがって、富山県では大型マンションの反動減が目立つ一方で、分譲一戸建も含めて、分譲住宅全体が弱含みであったといえます。
石川県の住宅着工件数

石川県の令和7年度の住宅着工総数は、5,397戸でした。
令和6年度の6,120戸から723戸減少し、前年比では約11.8%減となっています。
富山県と同じく減少ではありますが、富山県の約36.2%減と比べると、減少幅はかなり小さくなっています。
石川県では、持家が3,386戸で前年比約4.9%減にとどまっており、北陸三県の中では比較的底堅い動きです。
一方、貸家は1,238戸で前年比約25.8%減、分譲マンションは72戸で前年比約30.1%減となっており、賃貸住宅・分譲マンションでは弱さが見られます。
令和6年度の石川県は、持家が3,561戸と大きく増加していました。令和7年度はその反動もあり減少しましたが、年間を通じて見ると、持家の落ち込みは限定的でした。
令和6年能登半島地震後の住宅再建需要や建替え需要が、一定程度、持家の数字に影響した可能性もあります。
ただし、統計上は個別の着工理由までは確認できないため、この点は推測にとどまります。
注文住宅にあたる持家は、3,386戸でした。
令和6年度の3,561戸から175戸減少し、前年比では約4.9%減となっています。
石川県の持家は、令和5年度が2,662戸、令和6年度が3,561戸と大きく増加していました。令和7年度はそこから減少したものの、減少幅は小さく、令和元年度以降で見ても比較的高い水準です。
月別に見ると、4月、7月、8月、9月、10月、12月、1月、2月が前年同月比プラスとなっています。
つまり、12か月のうち8か月で前年同月を上回っており、年間合計が減少したとはいえ、注文住宅についてはかなり底堅い動きが見られました。
一方で、5月は前年同月比約37%減、3月は約35%減と大きく落ち込んでいます。特に3月は334戸と戸数自体は多いものの、令和6年度3月が514戸と非常に多かったため、前年同月比では大きなマイナスとなりました。
したがって、石川県の注文住宅は、令和6年度の反動を受けながらも、北陸三県の中では最も底堅い動きだったといえます。
賃貸住宅にあたる貸家は、1,238戸でした。
令和6年度の1,668戸から430戸減少し、前年比では約25.8%減となっています。
石川県の貸家は、令和元年度の2,775戸、令和2年度の2,564戸、令和3年度の2,624戸と比べると、近年はかなり低い水準にあります。令和7年度の1,238戸は、令和元年度以降で最も少ない数字です。
月別に見ると、4月、8月、10月、12月は前年同月比プラスとなっています。
一方で、5月は前年同月比約80%減、6月は約60%減、7月も約60%減、3月は約57%減と、大きく落ち込んだ月が複数あります。
石川県では、持家は底堅かった一方で、貸家は明確に弱い動きとなりました。
賃貸住宅は、人口動態、投資採算、建築費、金利、空室リスクなどの影響を受けやすいため、令和7年度は新規着工に慎重な姿勢が出たものと考えられます。
分譲マンションは、72戸でした。
令和6年度の103戸から31戸減少し、前年比では約30.1%減となっています。
令和7年度の石川県の分譲マンションは、3月に72戸の着工が確認されています。
年間を通じてみると、分譲マンションの着工はこの3月分に限られます。
一方で、分譲一戸建は694戸で、前年比約9.3%減となっています。
石川県の分譲一戸建は、令和元年度の977戸から長期的には水準を下げており、令和7年度の694戸は令和元年度以降で最も少ない数字です。
分譲マンションは大型案件の有無で年度ごとの数字が大きく変わりますが、分譲一戸建も含めると、石川県の分譲住宅は全体として弱含みであったといえます。
福井県の住宅着工件数

福井県の令和7年度の住宅着工総数は、2,883戸でした。
令和6年度の3,443戸から560戸減少し、前年比では約16.3%減となっています。
福井県も、富山県・石川県と同じく、令和7年度は減少となりました。
令和元年度以降で見ると、令和7年度の2,883戸は最も少ない水準です。
内訳を見ると、持家は1,683戸で前年比約15.4%減、貸家は827戸で前年比約13.3%減、分譲住宅は365戸で前年比約13.3%減です。
特定の項目だけが大きく落ち込んだというより、持家・貸家・分譲住宅のいずれも減少したことが、総数の減少につながっています。
一方で、月別に見ると、10月、12月、1月、2月は総数で前年同月比プラスとなっています。
年度当初は大きく落ち込みましたが、秋以降には一部で持ち直しの動きも見られます。
注文住宅にあたる持家は、1,683戸でした。
令和6年度の1,989戸から306戸減少し、前年比では約15.4%減となっています。
福井県の持家は、令和元年度に2,598戸、令和2年度に2,386戸、令和3年度に2,495戸ありましたが、その後は減少傾向です。令和7年度の1,683戸は、令和元年度以降で最も少ない数字です。
月別に見ると、4月は前年同月比約51%減、5月は約44%減と、年度当初に大きく落ち込みました。
その後も6月から11月までは前年同月比マイナスが続きましたが、12月、1月、2月は前年同月比プラスとなっています。
このため、福井県の注文住宅は、年度前半の落ち込みが大きかった一方、年度後半には一部で持ち直しも見られました。
ただし、年間合計では明確な減少であり、注文住宅市場は厳しい状況が続いています。
賃貸住宅にあたる貸家は、827戸でした。
令和6年度の954戸から127戸減少し、前年比では約13.3%減となっています。
福井県の貸家は、令和3年度の1,958戸をピークに、令和4年度1,874戸、令和5年度1,431戸、令和6年度954戸、令和7年度827戸と減少が続いています。
令和7年度の827戸は、令和元年度以降で最も少ない数字です。
月別に見ると、4月から9月までは前年同月比マイナスが続きました。
特に5月は前年同月比約72%減、6月は約66%減、11月も約66%減と、大きく落ち込んだ月があります。
一方で、10月は192戸で前年同月比約178%増、1月は97戸で約106%増、3月も98戸で約118%増となっており、月によっては大きく増えています。
福井県の貸家は、年間合計では減少傾向が続いているものの、月別では大型案件やまとまった賃貸住宅の着工の有無によって大きく振れる状況です。
分譲マンションは、41戸でした。
令和6年度の42戸から1戸減少し、前年比では約2.4%減となっています。
令和7年度の福井県の分譲マンションは、9月に41戸の着工が確認されています。
令和6年度の42戸とほぼ同水準であり、分譲マンションについては大きく増減したとはいえません。
ただし、福井県の場合、分譲マンションはもともと年度ごとの件数の振れが大きい項目です。
令和3年度には308戸、令和5年度には198戸の着工がありましたが、令和4年度は0戸、令和6年度は42戸、令和7年度は41戸です。
一方で、分譲一戸建は324戸で、前年比約14.5%減となっています。
福井県では、分譲マンションよりも分譲一戸建の減少の方が、分譲住宅全体に与える影響は大きいといえます。
全国の住宅着工件数

全国の令和7年度の新設住宅着工戸数は、711,171戸でした。
令和6年度の815,943戸から104,772戸減少し、前年比では約12.8%減となっています。
国土交通省は、令和7年度の新設住宅着工戸数について、持家・貸家・分譲住宅が減少したため、昨年度の増加から再び減少となったとしています。
全国の内訳を見ると、持家は195,111戸で前年比約12.5%減、貸家は308,906戸で前年比約13.4%減、分譲住宅は200,563戸で前年比約12.6%減です。
つまり、全国では特定の項目だけが悪かったというより、持家・貸家・分譲住宅がそろって減少した年度でした。
月別では、10月のみ総数で前年同月比プラスとなっていますが、それ以外の月は前年同月比マイナスです。
特に4月、5月、3月の落ち込みが大きく、令和6年度末の制度改正前の前倒し着工の反動が年度の数字に影響したと考えられます。
注文住宅にあたる持家は、195,111戸でした。
令和6年度の223,039戸から27,928戸減少し、前年比では約12.5%減となっています。
全国の持家は、令和元年度には283,338戸ありましたが、その後は減少傾向が続いています。令和7年度は20万戸を下回り、令和元年度以降で最も少ない水準です。
月別に見ると、1月のみ前年同月比プラスとなっていますが、それ以外の月は前年同月比マイナスです。
特に4月は約24%減、5月は約31%減、3月は約27%減と、大きく落ち込んでいます。
令和6年度の3月は、建築基準法・建築物省エネ法改正前の前倒し着工が全国的に発生していたと考えられるため、令和7年度はその反動が強く出たと見るのが自然です。
賃貸住宅にあたる貸家は、308,906戸でした。
令和6年度の356,862戸から47,956戸減少し、前年比では約13.4%減となっています。
全国の貸家は、令和4年度が347,221戸、令和5年度が340,395戸、令和6年度が356,862戸と、比較的高い水準で推移していました。令和7年度はそこから大きく減少しています。
月別に見ると、10月のみ前年同月比プラスで、それ以外の月は前年同月比マイナスです。
特に4月は約28%減、5月は約31%減、3月は約35%減と大きく減少しています。
賃貸住宅は、相続対策、資産運用、都市部の賃貸需要などに支えられる面がありますが、令和7年度は建築費や金利、投資採算の見通しが重く、全国的にも慎重な動きとなりました。
分譲マンションは、82,881戸でした。
令和6年度の105,227戸から22,346戸減少し、前年比では約21.2%減となっています。
全国の分譲マンションは、令和4年度が113,900戸、令和5年度が100,241戸、令和6年度が105,227戸でしたが、令和7年度は82,881戸まで減少しました。
月別に見ると、10月と12月は前年同月比プラスとなっています。
特に10月は11,650戸で、前年同月比約32%増となっています。
一方で、4月、5月、6月、8月、9月、11月、1月、2月、3月はいずれも前年同月比マイナスです。
特に5月は前年同月比約57%減、3月も約31%減と、大きく落ち込んでいます。
マンションは、土地価格、建築費、人件費、販売価格、需要見込みなどの影響を受けやすく、事業採算が合うエリアや案件に着工が集中しやすい分野です。
そのため、年度ごとの大型案件の有無によって数字が大きく変動します。
北陸三県でも、富山県の令和6年度のように大型マンションが複数着工すると、その年度の数字が大きく押し上げられます。逆に令和7年度のように大型案件が少ないと、数字は大きく落ち込みます。
まとめ
令和7年度の住宅着工は、令和6年度の駆け込み需要の反動や大型分譲マンションの有無が、各県の数字に大きく影響した年度となりました。特に富山県では、令和6年度に大型分譲マンションの着工が複数あったこともあり、令和7年度はその反動が数字に強く出ています。
一方で、住宅着工件数の減少は、分譲マンションだけで説明できるものではありません。注文住宅、賃貸住宅、分譲一戸建についても、建築費の高止まり、住宅ローン金利上昇への警戒感、制度改正後の確認申請・省エネ対応の負担などが影響していると考えられます。また、全国的にも、持家・貸家・分譲住宅はいずれも前年を下回っており、令和7年度は住宅市場全体として慎重な動きが目立つ年度でした。
このように、住宅着工件数は、建設業における受注環境、人手不足、外注費、資材価格、工期、労務管理にも関係する重要な指標です。そのため、今後も北陸三県を中心に、住宅着工動向を継続して確認していきたいと思います。
