社会保険の扶養手続き/被扶養者の認定基準と実務の流れを解説

扶養には、大きく分けて「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があります。

このうち、社会保険上の扶養とは、社会保険に加入している役員や従業員、つまり被保険者に主として生計を維持されている家族を、健康保険の被扶養者として認定する制度です。家族が被扶養者として認定されると、その家族についても、病気やケガ、出産、死亡などに関する健康保険の給付を受けることができます。また、令和8年4月1日以降、被扶養者の収入が賃金、つまり給与収入のみの場合は、労働条件通知書などに記載された労働契約の内容により、年間収入を判定する取扱いが始まります。

今回の記事では、協会けんぽに加入している会社を前提に、社会保険の被扶養者の認定基準や、手続きの流れについて解説します。


目次

1.まず確認すべき扶養情報

被保険者から、婚姻、出産、退職、収入減少などを理由に、家族を扶養に追加したいと連絡があった場合、まずは扶養に関する基本情報を確認します。

口頭だけで確認すると、続柄、収入、同居・別居、仕送りの有無などに漏れが生じやすいため、会社としては、任意の確認書を用意し、被保険者に記入してもらう方法がおすすめです

確認しておきたい主な項目は、次のとおりです。

【扶養情報の確認事項】

1.扶養追加日
2.扶養追加の理由
3.扶養家族の氏名、ふりがな
4.扶養家族の電話番号
 ※配偶者の場合など、必要に応じて確認
5.扶養家族の生年月日
6.扶養家族の性別
7.被保険者本人との続柄
8.同居の有無および住所
9.別居の場合の仕送り額、仕送り回数
10.海外居住の場合、日本国内に住所を有しない理由
11.扶養家族の職業
12.扶養家族の年間見込み収入額
13.共働き夫婦の子どもを扶養に入れる場合、配偶者の年間見込み収入額
14.扶養家族のマイナ保険証の保有の有無
15.資格確認書の発行要否

また、被扶養者異動届には、原則として扶養家族のマイナンバーを記載します。そのため、会社としては、扶養家族のマイナンバーを適切な方法で収集・管理する必要があります。

2.被扶養者になれる家族

健康保険では、被保険者に扶養されている家族を被扶養者といいます。被扶養者に該当するためには、次の2つを満たしている必要があります。

被扶養者の範囲に該当すること
・被扶養者の収入要件を満たすこと

被扶養者の範囲

主として被保険者の収入により生計を維持する、以下の被扶養者の範囲図に該当する家族が対象となります。

参考資料

被扶養者の範囲は、被保険者との続柄によって異なります。

配偶者、子、孫、兄弟姉妹、父母などの直系尊属については、同居していなくても、主として被保険者により生計を維持されていれば、被扶養者となる可能性があります。一方で、叔父、叔母、甥、姪など、一定の三親等内の親族については、同居していることが要件となる場合があります。

そのため、実務上は、まず「続柄」と「同居・別居の有無」を確認し、そのうえで収入要件を確認します。


被扶養者の収入要件

被扶養者の収入要件は、被保険者との同居の有無によって異なります。

なお、この記事で「130万円」と記載している部分は、次の場合には金額を読み替えます。

【読み替え】

60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合
 →「180万円

19歳以上23歳未満の場合
 →「150万円
  (被保険者の配偶者は除きます。)

扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。

たとえば、その年の12月31日時点で19歳以上22歳以下であれば、150万円未満の基準の対象になります。逆に、23歳になる年については、原則どおり130万円未満の基準に戻ります。

また、150万円「以下」ではなく、150万円「未満」である点にも注意が必要です。年収が150万円ちょうどの場合は、基準を満たさないことになります。

この150万円基準は、学生であることを要件としていません。大学生、専門学校生などを想定しやすい制度ではありますが、制度上は「学生かどうか」ではなく、「扶養認定日が属する年の12月31日時点で19歳以上23歳未満かどうか」で判断します。


令和8年4月1日以降の給与収入のみの場合

令和8年4月1日以降、被扶養者の収入が給与収入のみの場合は、労働条件通知書などに記載された労働契約の内容によって年間収入を判定します。この場合、時給、所定労働時間、所定労働日数、契約上支給される手当、賞与など、労働契約の内容から見込まれる年間収入を確認します。

一方で、労働条件通知書などに明確な規定がなく、あらかじめ金額を見込みにくい時間外労働手当などは、年間収入には含めません。なお、労働契約内容が確認できる労働条件通知書などの書類がない場合は、従来どおり、課税証明書や非課税証明書などにより年間収入を判定します。

令和8年4月1日以降は、原則労働条件通知書に記載された金額で年間収入を判定する!


同居のとき

被扶養者が被保険者と同居している場合は、被扶養者の今後の見込み年収額が、次の両方を満たす必要があります。

130万円未満
被保険者の年収の2分の1未満

ただし、前述のとおり、60歳以上または一定の障害者の場合は「180万円未満」、19歳以上23歳未満の場合は「150万円未満」として判断します。

そのため、たとえば19歳以上23歳未満の子については、年収150万円未満であって、かつ被保険者の年収の2分の1未満であるかを確認します。


別居のとき

被扶養者が被保険者と別居している場合は、被扶養者の今後の見込み年収額が、次の両方を満たす必要があります。

130万円未満
・被保険者からの仕送り額より少ないこと

別居の場合も、60歳以上または一定の障害者の場合は「180万円未満」、19歳以上23歳未満の場合は「150万円未満」として判断します。

ただし、別居の場合は、年収基準だけでなく、被保険者からの仕送り額より収入が少ないことも必要です。たとえば、19歳以上23歳未満の子の年収が150万円未満であっても、その子の収入が被保険者からの仕送り額以上である場合は、生計維持関係が認められない可能性があります。

つまり、19歳以上23歳未満であれば単純に「150万円未満なら扶養に入れる」というわけではありません。同居・別居の別に応じて、被保険者との生計維持関係もあわせて確認する必要があります。


一時的に収入が増加した場合

被扶養者の年収が130万円以上になった場合でも、人手不足による労働時間の延長など、一時的に収入が増加した場合には、「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書を提出することで、引き続き被扶養者と認められる場合があります

この取扱いは、あくまで一時的な事情として認定を行うものです。そのため、同一の被扶養者について、原則として連続2回までとされています。

該当する可能性がある場合は、被保険者に証明書を渡し、被扶養者の勤務先の事業主に証明書を発行してもらうよう案内します。
参考・ダウンロード:厚生労働省『被扶養者の収入確認に当たっての「一時的な収入変動」に係る事業主の証明書』

なお、19歳以上23歳未満の方についても、150万円未満の基準を超えた場合に、それが一時的な収入増加であるかどうかを確認する場面が出てくると考えられます。恒常的な契約変更による収入増加なのか、一時的な勤務増加なのかを確認することが大切です。


3.必要書類の確認

被扶養者の認定基準を満たすかを確認するため、被保険者に必要書類を案内し、受領します。

続柄確認の書類

以下のいずれかの書類を案内し、受領します。

(1)提出日からさかのぼって90日以内に発行された被扶養者の戸籍謄本または戸籍抄本
(2)住民票の写し

住民票の写しは、被保険者が世帯主で、被保険者と被扶養者が同一世帯のときに限ります。

また、住民票の写しは、マイナンバーの記載がないものを提出してもらう必要があります。


被扶養者の収入要件確認の書類

被扶養者の収入要件を確認するため、収入の状況に応じて必要書類を案内します。

参考資料

たとえば、給与収入がある場合は、給与明細書、労働条件通知書、雇用契約書などを確認します。年金収入がある場合は、年金額改定通知書や年金振込通知書などを確認します。退職により扶養に入る場合は、退職証明書や離職票などを確認することがあります。

令和8年4月1日以降、被扶養者の収入が給与収入のみであり、労働条件通知書などの書類で収入要件を確認した場合、届出をする際には「労働条件通知書」や「給与収入のみである旨の申立書」が必要になる場合があります。

届出時にこれらの添付書類が必要になるかは、事前に年金事務所へ確認することをおすすめします。


仕送り額が分かる書類

被扶養者が別居している場合、仕送り額が分かる書類が必要です。

たとえば、次のような書類です。

・現金書留の控え
・銀行振込の記録
・通帳の写し

ただし、16歳未満の子や、16歳以上の学生が日本国内で別居している場合は、仕送り額が分かる書類は不要とされています。

参考:厚生労働省『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き』


被扶養者が海外居住の場合

被扶養者が海外に居住している場合は、海外特例要件に該当することを確認する書類が必要です。

たとえば、留学、海外赴任への同行、観光・保養・ボランティアなど、日本国内に住所を有しない理由によって、必要となる確認書類が異なります。該当する場合は、事前に年金事務所へ確認しておくと安心です。

参考:日本年金機構『従業員の家族が海外居住の場合の手続き』


4.被扶養者異動届の作成と提出

必要書類が整ったら、「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を作成し、届出を行います。

参考・ダウンロード:日本年金機構『健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)』

【届出の概要】

提出時期:事実発生から5日以内
届出様式:健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)
添付書類:続柄確認の書類、収入要件確認の書類など
届出先:事務センターまたは管轄の年金事務所
届出方法:電子申請、郵送、窓口持参
※窓口持参は年金事務所のみ

被扶養者が20歳以上60歳未満の配偶者の場合、原則として国民年金の第3号被保険者となります。この届書は、健康保険の被扶養者異動届と国民年金第3号被保険者関係届が一体化しているため、あわせて国民年金第3号の手続きを行うことができます。


確認書類の添付について

続柄または収入要件の確認書類については、一定の場合に添付が不要となることがあります。

(1)続柄確認の書類

以下のどちらにも該当する場合、続柄確認の書類は添付不要です。

・被保険者と被扶養者のマイナンバーが届書に記載されている
・続柄の確認書類により会社が続柄を確認し、被扶養者異動届の備考欄の「続柄確認済み」にチェックを入れている

出典:日本年金機構『健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)』(加工して作成)

添付が不要となる場合でも、会社としては、続柄を確認した事実を残しておくことが大切です。


(2)収入要件確認の書類

以下のいずれかに該当する場合、収入要件確認の書類は添付不要です。

・被扶養者が16歳未満である
・被扶養者が所得税法上の控除対象配偶者または扶養親族であることを会社が確認し、被扶養者異動届の「事業主確認欄」に○が付されている

ただし、被保険者の税法上の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、収入確認の証明書類を添付する必要があります。また、60日以上さかのぼって申請する場合も、原則として書類添付が必要です。ただし、出生や婚姻などの場合には、添付が不要となることがあります。

参考資料

出典:日本年金機構『健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)』(加工して作成)


5.資格確認書の発行要否

令和6年12月から、被扶養者異動届に「資格確認書発行要否」欄が新設されています。被扶養者が資格確認書の発行を希望する場合は、この欄にチェックを入れて届出します。

マイナ保険証を保有していない人は、チェックの有無にかかわらず資格確認書が発行されます。ただし、チェックを入れない場合、資格確認書の発行までに30日から50日程度かかることがあります。そのため、マイナ保険証を保有していない場合や、早期に資格確認書が必要な場合は、チェックを入れて届出することをおすすめします。

参考資料

出典:日本年金機構『健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)』(加工して作成)


6.被扶養者として認定された後の流れ

届出が受理され、被扶養者として認定された後の流れは、マイナ保険証の有無によって異なります。

①マイナ保険証を保有している方

通常は、日本年金機構が届書を受理してから2〜5営業日程度で、マイナ保険証の利用が可能となります。利用できるようになったかどうかは、マイナポータルで確認できます。

会社には「資格情報のお知らせ」が届きますので、労務担当者は届き次第、速やかに被保険者へ渡します。資格確認書の発行を希望している場合は、資格確認書もあわせて届きます。


②マイナ保険証を保有していない方

マイナ保険証を保有していない方については、「資格情報のお知らせ」と「資格確認書」が届きます。資格確認書を医療機関の窓口で提示することで、保険診療を受けることができます。

3月、4月の入退社が多い時期は、年金事務所の処理も混雑しやすくなりますのでご注意ください。

届出日までに、被扶養者の認定基準を満たしているかどうかの確認や、必要書類の準備を進めておくと、早めに病院を受診したい被扶養者の手続きもスムーズに進めることができます。

参考:厚生労働省『資格確認書について(マイナ保険証を使わない場合の受診方法)』

7.過去の記事

過去にも被扶養者に絡む記事を書いていますので、こちらもご参照ください。

記事:「被扶養者資格の再確認」はもう提出した?改正も含めた届出の流れを解説します。

記事:「令和6年10月からの社会保険の適用拡大と、扶養範囲・手続きの流れについて解説します!」


8.まとめ

社会保険の被扶養者認定では、続柄、同居・別居、収入、生計維持関係など、複数の要件を確認する必要があります。特に、19歳以上23歳未満の方については、令和7年10月1日以降、年間収入要件が原則の130万円未満から150万円未満に引き上げられています。ただし、150万円未満であれば無条件に扶養に入れるわけではなく、同居の場合は被保険者の年収の2分の1未満であること、別居の場合は仕送り額より収入が少ないことなども確認する必要があります。

また、令和8年4月1日以降は、給与収入のみの方について、労働条件通知書などの労働契約の内容により年間収入を判定する取扱いが始まります。労務担当者は、扶養追加の申出があったときだけでなく、定期的に被保険者の扶養家族の状況を確認することが大切です。特に、学生だった子どもが社会人になったとき、配偶者の収入が増えたとき、別居になったときなどは、扶養削除の手続き漏れが生じることがあります。

被扶養者資格の再確認は毎年度実施されます。被扶養者の範囲や収入要件、必要書類の取扱いを理解し、手続き漏れがないように対応しましょう。

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