手取り満額相当が受給可能に!2025年4月から「出生後休業支援給付金」が始まります。

子どもが生まれた後の育児と仕事の両立をどう支援するか――。

そんな課題に対応するため、2025年4月から新たに「出生後休業支援給付金」が始まります。この制度は、父母ともに働く家庭で、共に育児休業を取得するケースに対して、特に経済的な支援を強化するものです。

これまで取得率の低さが課題とされてきた男性の育児休業を後押しする制度としても、大きな注目を集めています。

この記事では、「出生後休業支援給付金」の概要から対象者、支給要件、申請方法までをわかりやすくご紹介します。

目次

出生後休業支援給付金の背景

男性の育児休業の取得率は、近年伸びてはいるものの、2023年度は3割と女性の8割半ばとは大きく開きがあります。また、育児休業を取得した女性の9割以上が6か月以上休業している状況に対し、男性は約4割が2週間未満、さらに半数弱が2週間以上1か月未満の取得となっており、男性は短期間での取得を選択する傾向にあります。

男性が育児休業制度を利用しなかった理由としては「収入を減らしたくなかったから」が最も多く、経済的な不安が男性の育児休業の取得率の低さの一因となっていることがうかがえます。

こうした背景から、新たな経済的支援として「出生後休業支援給付金」が創設されることとなりました。

出生後休業支援給付金について

出生後休業支援給付金は、原則として、両親ともに子どもの出生直後の一定期間内に育児休業する場合に支給される給付金です。

1 対象者

雇用保険の一般被保険者および高年齢被保険者(以下、被保険者)

2 支給要件

以下の①②いずれの要件も満たすことが必要です。

なお、出生後休業支援給付金の要件において、出生時育児休業は「出生時育児休業給付金」、育児休業は「育児休業給付金」が支給される休業であることが必要であるため、この記事においてもこれを前提として解説します。

①被保険者の要件

被保険者が産後休業をしているかどうかで、下図のとおり要件が異なります

いずれも、対象期間内に通算14日以上の出生時育児休業または育児休業を取得していなければなりません。

出産した女性の休業では、産後8週間までは産後休業であり、育児休業は産後8週間を経過する日の翌日から取得できます。そのため、対象期間が16週間を経過する日の翌日とされています。

【施行日より前に休業開始している場合】

2025年4月1日より前に出生時育児休業や育児休業を開始している場合、上図の「子どもの出生日または出産予定日のうち早い日」は2025年4月1日に読み替えて要件を確認します。

つまり・・・
・被保険者が父親または子が養子の場合
2025年4月1日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に、出生時育児休業または育児休業を通算14日以上取得していること
・被保険者が母親、かつ、子が養子でない場合
2025年4月1日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日」までの期間に、育児休業を通算14日以上取得していること
が要件となりますのでご注意ください。

②被保険者の配偶者の要件

被保険者の配偶者が以下に該当していることが必要です。

配偶者の育児休業を要件としない場合」とは、以下のいずれかに該当する場合をいいます。

出典:厚生労働省『2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します』P2

なお、7.の「1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることできない」とは、具体的には次のようなケースを指します。

(1)日々雇用される者であるため
(2)出生時育児休業の申出をすることができない有期雇用労働者であるため
(3)労使協定に基づき事業主から育児休業の申出又は出生時育児休業の申出を拒まれたため
(4)公務員であって育児休業の請求に対して任命権者から育児休業が承認されなかったため
(5)雇用保険被保険者ではないため、育児休業給付を受給することができない(共済組合の組合員である公務員の場合は除く)
(6)短期雇用特例被保険者であるため、育児休業給付を受給することができない
(7)雇用保険被保険者であった期間が1年未満のため、育児休業給付を受給することができない
(8)雇用保険被保険者であった期間は1年以上あるが、賃金支払いの基礎となる日数や労働時間が不足するため、育児休業給付を受給することができない
(9)配偶者の勤務先の出生時育児休業又は育児休業が有給の休業であるため、育児休業給付を受給することができない(有給でなければ出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給される休業を、期間内に通算して14日以上取得している必要があります。)

3 支給額

出生後休業支援給付金は以下のように計算され、休業開始前の賃金(休業開始時賃金日額)の13%相当額が支給されます。休業開始時賃金日額は、出生時育児休業給付金や育児休業給付金と同様に「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」に記入した賃金をもとに算出されます。

出生後休業支援給付金と、出生時育児休業給付金または育児休業給付金をあわせると、給付率は最大80%(休業開始前の手取りの10割相当)となります。

(出典)厚生労働省『2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します』P1

【支給額の調整について】
休業中に会社から賃金の支払があり、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が減額された場合であっても、出生後休業支援給付金は全額支給されます
ただし、以下のように出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給されない場合は、出生後休業支援給付金も支給されません。
・支払われた賃金が「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%以上の額となったとき
・支給単位期間中の就業日数が10日を超え、かつ就業時間が80時間を超えたとき

出生時育児休業給付または育児休業給付の支給額が0円となった場合は、出生後休業支援給付金の支給額も0円となります。出生後休業支援給付金は、育児休業給付の支給が前提となりますので、出生後休業支援給付金のみが支給されることはありません。

配偶者の支給要件確認

出生後休業支援給付金の申請手続きを行う前に、配偶者の支給要件を確認する書類として、配偶者の状況に応じた以下①〜③のいずれかを準備します。

①配偶者が雇用保険被保険者の場合

・世帯全員が記載された住民票(続柄あり)の写しなど、被保険者の配偶者であることを確認できるもの

・配偶者の雇用保険被保険者番号

②配偶者が公務員の場合(雇用保険被保険者の場合をのぞく)

・世帯全員が記載された住民票(続柄あり)の写しなど、被保険者の配偶者であることを確認できるもの

・育児休業の承認を行った任命権者からの通知書の写し、または共済組合から支給される育児休業手当金の支給決定通知書の写しなど、配偶者の育児休業の取得期間を確認できるもの

③「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当する場合

以下の厚生労働省のリーフレットに記載の書類が必要です。

参考:厚生労働省『出生後休業支援給付金において配偶者の育児休業を要件としない場合の添付書類について』

各添付書類については、以下からダウンロードできます。

参考:厚生労働省『育児休業等給付について』

支給申請手続きについて

出生後休業支援給付金の申請手続きは、原則として、出生時育児休業給付金の申請または育児休業給付金の初回申請とあわせて行います。

出生時育児休業給付金とあわせて申請する場合

①支給申請書の作成

「育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書」を作成します。

出生時育児休業給付金の申請に必要な内容をすべて記入したうえで、下図の赤枠にある「配偶者の被保険者番号」欄、「配偶者の育児休業開始年月日」欄、「配偶者の状態」欄のうちいずれかひとつを記入してください。(複数記載は不可)

「配偶者の被保険者番号」欄

配偶者が雇用保険被保険者で、「子どもの出生日または出産予定日のうち早い日」から「子どもの出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」の対象期間に、出生時育児休業または育児休業を14日以上取得した場合に記入します。

「配偶者の育児休業開始年月日」欄

配偶者が公務員(雇用保険被保険者である場合をのぞく)で、「子どもの出生日または出産予定日のうち早い日」から「子どもの出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」の対象期間に、法令に基づく育児休業を14日以上取得した場合に記入します。

「配偶者の状態」欄

子どもの出生日の翌日において、配偶者が「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当する場合に記入します。

②支給申請書の提出

①で作成した支給申請書を提出します。

申請様式:

・育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書

・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(※)

※出生時育児休業給付金の申請のため作成したもの(出生後休業支援給付金用として改めての提出は不要)

添付書類:出生時育児休業給付金の申請で添付する書類(出勤簿、賃金台帳など)のほか、前述の「配偶者の支給要件確認」で準備した書類

申請先 :事業所の所在地を管轄するハローワーク

申請方法:郵送または持参、電子申請

申請時期:以下の出生時育児休業給付金の申請時期と同じ

【出生時育児休業給付金の申請時期】

子どもの出生日(出生予定日前に出生したときは出生予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から、当該日から起算して2か月を経過する日が属する月の末日まで

これに加え、2025年4月より以下の日からの申請も可能となります。
・出生時育児休業の取得日数が28日に達した場合:28日に達した日の翌日
・2回目の出生時育児休業をした場合:2回目の出生時育児休業を終了した日の翌日

出典:厚生労働省『育児休業等給付の内容と支給申請手続』P6

育児休業給付金(初回)とあわせて申請する場合

①支給申請書の作成

「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書」を作成します。

育児休業給付金の申請に必要な内容をすべて記入したうえで、下図の赤枠にある「配偶者の被保険者番号」欄、「配偶者の育児休業開始年月日」欄、「配偶者の状態」欄のうちいずれかひとつを記入してください。どの欄を記入するかの判断は「1」を参照してください。

②支給申請書の提出

で作成した支給申請書を提出します。

申請様式:

・育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書

・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(※)

※育児休業給付金の申請のため作成したもの(出生後休業支援給付金用として改めての提出は不要)

添付書類:育児休業給付金(初回)の申請で添付する書類(出勤簿、賃金台帳など)のほか、前述の「配偶者の支給要件確認」で準備した書類

申請先 :事業所の所在地を管轄するハローワーク

申請方法:郵送または持参、電子申請

申請時期:育児休業給付金の初回申請と同じ(※)

※育児休業開始日から起算して4か月を経過する日の属する月の末日まで

単独で出生後休業支援給付金の支給申請を行う場合

出生時育児休業給付金または育児休業給付金(初回)とあわせて申請することが原則であるものの、単独で出生後休業支援給付金の支給申請を行うことも可能です。ただし、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給決定後でなければ申請できません。

(申請時期:被保険者の育児休業開始日から起算して4か月を経過する日の属する月の末日まで)

支給決定後の対応

支給申請書を提出した後、「出生時育児休業給付金支給決定通知書」または「育児休業給付金支給決定通知書」とともに「出生後休業支援給付金支給決定通知書」が交付されます。(不支給となった場合は「出生後休業支援給付金不支給決定通知書」が交付されます。)

企業に届き次第、従業員に通知書を渡してください。

出生後休業支援給付金は、出生時育児休業給付金または育児休業給付金とともに、従業員の口座に振り込まれます。

育児介護休業法の改正

2025年4月1日施行及び2025年10月1日施行の育児介護休業法の法改正については、過去の記事で紹介しています。こちらもご参照ください。

記事:知っておきたい!育児・介護休業法と次世代育成法の重要改正点

まとめ

出生後休業支援給付金は、経済的な不安から育児休業取得をためらう家庭への対応も考慮した新たな支援制度です。

2025年4月以降に子どもが生まれる予定の従業員だけでなく、それ以前に生まれたお子さんを育てる家庭にも支給される可能性があります。

対象となる可能性がある従業員には、早めに制度の周知と申請準備を行うことをおすすめします。

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